1年ぶりのお仕事。マセラティのセルモーター修理。D6RA64。 [車、バイク]
実に一年ぶりにセルモーターの修理をショップから受けました。
今回は4個ある不動品から2個復活させてほしいということでした。ただ、昔は定期的に修理依頼のあったバレオのBMW用セルモーター、D6RA15やD6RA7、D6RA55などは安い中国製が市場に出ているため修理依頼が全く無くなり、手元に部品も在庫していないためまずは送られてきた4個の不動品をガタが出てると致命傷となる遊星ギアが見えるところまで分解し、使えそうな2個分の部品をアメリカへ発注、XLRのレストアのめどが付くまで待ってもらいました。
分解前にこのリベットをドリルでもんで切断します。
モーターとプランジャースイッチを結ぶケーブルも外しておきます。
バレオのD6RA64。このモーターは絶版です。
まずはモーターAからチェック。0.5mmと言うのはピニオンのガタです。モーター先端のピニオンはワンウェイクラッチによって先端から見て反時計回りには回転できますが、時計回りには回りにくくなってます。ところが内部の遊星ギアユニットがヘタってくると時計回りにもちょっと動くようになってしまいます。ギア先端で1mm以上動くようだと基本的に交換できない内部の遊星ギアにかなりのガタが出ているため復活できません。今回2個はほぼガタなし、2個は1mm弱あったのでだめだと判断したのですが。(顛末は後述)
不動の原因はいつものマグネットの剥がれ。
遊星ギアユニットのグリス封じの蓋を外し遊星ギアのガタを見ます。こいつはOK。蓋には削れたマグネットの粉が。
モーターB。
こいつもマグネット剥がれ。無理して回したためマグネットが粉になってました。動きがおかしかったら絶対にセルを回さないこと。回すとマグネットの削りカスがセルモーター全体に回りさらに被害を広げます。遊星ギアボックスのグリスも真っ黒。
モーターC。
こいつは一番ガタが大きかったやつです。(実際は遊星ギアのガタではなく外周ギアの摩耗でした。なので復活可能でした)
マグネットの状態も一番悪かったです。
当然粉塵も蓋の上に積もってます。
以外や遊星ギアにガタはありませんでした。これも復活可能。
モーターD。一番ガタが少ないやつ。
おおっ、マグネットは剥がれてはいますが削れてません。
蓋にも粉塵無し。
当然ギアボックスもきれい。これが復活1号ですな。
今回AとDを復活させることにして、12月2日、注文したマグネットが来る前にギアボックスのオーバーホールを済ませます。
カバーを取ってシャフトからピニオンを外します。(分解方法は以前の記事参照。)
クリーナーで掃除して
ドライバーなどで固着したグリスを除去。
遊星ギアのグリスも除去。ガタは殆どありません。今まで修理した中では一番いい状態です。
掃除ができたら新しい耐熱グリスを詰め込んで組み付けます。とりあえず3個組み付けました。
で部品が来たので12月4日修理開始。
さてバレオの純正セルモーターの場合、こんなシールが張ってあり、真ん中の矢印はモーターの回転方向を示します(矢印がないものもあり)。この場合左がセルモーターの先端でそちらから見て時計回りということです。なぜこんな印があるかというとマグネットハウジングはD6RAシリーズすべて共通形状で、セルモーターの搭載方向の違いで回転方向が逆になるのに外観からどっち周りかは判断できないからです。例えばBMWR100RSは後ろ向きにセルモーターを搭載していてモーターは時計回りですが、R1100になるとモーターは後ろから前向きに刺さっているため反時計回りになります。
さあ、Dのモーター部分をオーバーホールします。
ブラシは半分沈んでます。
マグネット1枚が剥離。貼り直せば使えそうですが。接着を保証できないので新品に交換します。
アーマチュアを引っこ抜くと剥がれた1枚がくっついてきました。
アメリカから到着した右回り用マグネット。箱から出すとどっち周りかわからなくなるのでCW(クロックワイズの略。時計回りのこと。反時計回りはCCW:カウンタークロックワイズ)とマジックで記入しときます。つまり、セルモーターはプラスマイナス入れ替えても逆に回らないということです。
このマグネットは剥がれ防止機構付き。
アーマチュアは再利用。
スラストベアリングにグリスを塗って
新品マグネットにオン。
クリップで留めて
グリスを封入した蓋をかぶせます。
ブラシホルダーを固定して新品ブラシを入れます。
右が付いてたやつで左が新品。使用可能域のほぼ半分に減ってました。
ブラシ組付け完了。
モーター部分とすでにOHして組み付けてあったギア部分を合体。
Dモーター完成。ちゃんと回ることを確認し、今日の日付を入れたテプラを貼っておきます。
今回の発注は2個なので次に程度の良いAモーターを同様に組み上げます。
アーマチュアにくっついたマグネットの粉を掃除して
こちらもブラシ残量はDと同じ。
2個め完成。こっちも絶好調。
とりあえずまさかの復活可能な残り2個は次回納入ということでキープ。
修理代金を頂いたおかげで歳を越せます。
しかしこんな壊れるのがデフォなセルモーター使ってるマセラティ3200GTとかビトゥルボとかこれからどうすんだろう。セルモーター外すのにエンジン上の補機全部外さないといけない構造もどうかと思います。
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こんにちは。Moto Guzzi Sport 1100についているValeo D6RA21の調子が悪るかった(セルが回らなくなったので、ゴムハンマーでトントンしたら回るようになった)ので、分解清掃をしてみようと情報集めをしていたところ、こちらのページを発見しまして、内容を拝見したのですが、自分にはフル整備ができそうにないと思いました。分解清掃をしていただくことは可能なのでしょうか。またその場合費用はどの程度かかるものでしょうか?新品を買った方が安いよ、ということでしたらそれもそれですが、分解整備で直るならばそのほうが良いと思いました。どうぞよろしくお願い致します。
by Shin (2022-04-18 16:54)
Shinさんありがとうございます。
この頃は修理で18000円(オーバーホール基本工賃8000円+マグネットとブラシ代金10000円)で修理を受けてたんですが、今ではD6RA15(7の改良品)やD6RA210(21の改良品)などは新品(もちろんバレオ製ではなく米国エンデュララストブランドの中華ですが、テストも十分やった壊れないものです)が約20000円(現地価格12000円+送料8000円)ぐらいで手に入るため修理はやめました。どうしてもヴァレオじゃないと嫌という人からの発注は受けますが、内部ギアの摩耗があるためやっぱり新品とは寿命の点で劣ります。
グッチ用がyahooオークションで24000円で出てますね。
https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/n1046206832
どっちにしろ部品(マグネットとブラシ)はもう持ってませんのですぐに修理はできませんし、この円安で部品代が1.5倍ぐらいに高騰してますので輸入も1ドルが110円台にならないと無理です。
by MHR (2022-04-20 23:48)
フルオーバーホールでなくても、セルモーターの後ろのキャップの8mmナットを外してキャップを引っ張ればブラシの残量は見られますので確認してください。新品は外周とツライチでブラシの長さは16mm、有効残量はブラシホルダーの面から10mmです。ブラシの交換だけなら細いドライバーが有れば特殊工具もいりません。必要なのはセルモーターを取り外す13mmのスパナとキャップを外す8mmのスパナだけです。
詳しくはこちらを参考にしてください。
http://www.hm.aitai.ne.jp/~soejimakazuya/VALEOTOP.html
by MHR (2022-04-20 23:58)
遅くなりました。ご返答本当に感謝します。
リンクから分解の仕方を拝見しました。
ブラシのところまではいけたのですが、バネ外しで挫折しました。ただおっしゃるようにブラシを外すことはできそうなので、今度長さを測ろうかと思います。当のセルモーターですが、挫折したあとゴムハンマーでトントンと叩いてあげると回るようになりました。もう少しで寿命なのかなあと思い、また分解の仕方を拝見して自分では無理!と思いましたので、EuroMotorのモーターを手に入れる算段をしています。急激に円安になったので悩むところです。
情報等本当に助かります。ご相談に載って頂き誠にありがとうございました。
by Shin (2022-05-02 16:38)