スウェーデンの至宝、不動のハッセルブラッド501cを分解してみよう。(修理してみよう。ではないな) [カメラ、写真]
*11月10日記:いろいろいじっててシャッターレリーズボタンあたりの役目の考察が間違ってたのに気づいたので書き直ししました。まあこれも想像なので間違ってるのかもですが。
だいぶ前のお話になりますが、前勤めていた会社の同僚が脳梗塞で倒れたときに、家を売るため色々引き上げてきました。
多趣味の人間だったのでそりゃもうたくさんの物があって。
その中で一番多かったのがカメラです。しかも一般人が持っていないような古い特殊なカメラばかり。コーワとかヤシカとかリコーとかの二眼レフがメインです。いわゆる中判カメラですね。
その中で一番高価だと思われるのが、今回修理したスウェーデン製の中判一眼レフカメラ「ハッセルブラッド」です。
といっても世間で評価の高い500cではなく、廉価版として、通常は別売りのカールツァイスのレンズとフィルムパックとのセットで売られた501cですが。
でも私なんざ、カールツァイスレンズときいただけでひれ伏してしまいます。
私がハッセルブラッドの存在を知ったのは、なんと学生時代の寮で読んだマーガレットだったかに載っていた弓月光氏の少女漫画でした。主人公が使っていたのがハッセルブラッドでカールツァイスレンズのテレテッサーとか言う望遠レンズ。今思えばすごい少女漫画でしたねえ。
レンズが外れてる理由は後述。
フィルムは120サイズ呼ばれるものを使い、6X6版(60mm角)というでっかい真四角な画面で写ります。基本的に12枚撮りです。(通常のフィルムは135サイズと言い、画面が36mmX24mm、フィルムの幅が35mmなので通称35mmフィルムと呼びます。こちらは12枚、24枚、36枚撮りがある)
このフィルムは「EXPOSED」と書いてある帯が巻いてあるので「露光済み=撮影済みで未現像」を表します。(前の持ち主の撮影済みフィルム。中身に興味がないので放置)120サイズのフィルムを買うとこのシールが付いてきますので、撮影済みのフィルムを巻き取ったらシールを貼って現像に出します。
さて今回これを分解するはめになったのは、このカメラの使用方法を知らないままレンズを外したことが発端でした。レンズを戻そうとしてもはまりませんし、巻き上げもシャッターをきることもできなくなったのです。いやもしかしたらもともとシャッターが切れなかったのかも。
どうしてこうなったのかというと、このカメラ、ボディとレンズとフィルムパックの3点で出来てるのですが、それぞれが基本的に独立したシステムで、当然連動させるためのジョイントがあり、ボディにレンズをはめるのもフィルムパックを装着するのも、それぞれ3点を普通のカメラで言う(といってもデジカメ世代にはわかるまい)巻き上げた状態にしてシャッターチャージしてないとすんなり装着できないし、シャッターを切った状態で外そうものなら二度とはまらない状態になったり、今回のように巻き上げ自体ができなくなっちゃうんです。
ボディ側のレンズとの連動レバー。ただしこの状態だとレンズははまりません。
こっちがレンズ側。これは巻き上げた状態なので、赤いマークと溝が一致してます。その右下がシャッターを切るレバー。
このカメラ、本体にシャッターはなくてレンズ側にシャッターがあるのでこういう装置が必要なわけでして。
ボディ側でフィルムを巻き上げると赤い矢印方向にネジが巻かれ、右のシャッターレバーがシャッターを切ると約3/4回転ほど反時計方向に溝が回転します。その回転でシャッターが切れるのです。
さっきのボディ側の拡大。この状態はシャッターを切ったあと更に半回転させた状態です(完全に操作ミス)。このレバーにレンズ側の溝が右上からスライドして嵌合するのですが(後述)、この状態だと右下の円周上に立ち上がってる壁にブロックされて、回したレンズがはまりません。
これが本来のシャッターを切った状態で巻き上げる前の自然な位置(修理後シャッターを切った状態)。この位置だとレンズの溝付シャフトがこの壁にあたってしまい、締め込む方向への回転をブロックされてレンズははまりません。逆にレンズが付いたままでこの状態だと、溝が噛み合ったままレンズを緩める方向へ回せないので、当然レンズが外せないのです。
これが巻き上げて3/4回転した、レンズがはまる(あるいは外せる)状態。(写真は修理後巻き上げた状態、ちょっとずれてますが許容範囲)
上の写真のように、クランクを巻き上げてシャッターチャージされた状態だと、ボディ側の黄色の矢印部分の突起にレンズ側のシャフトの溝が右の矢印のように滑り込むわけでして(写真は修理後)。ここがちゃんとはまらないとカメラ全体がロック状態となり、シャッターもきれず、巻き上げも不可能というにっちもさっちもいかない状態に。シャッターがロックしたままだとレンズも外れないため、レンズを外さないと不可能となる分解もできなくなります。
よせばいいのに、今回図らずもそういう状態を作ってしまいました。せっかく外れていたレンズを好奇心からはめてしまったのです。試行錯誤してなんとか外れましたがいらん時間使いました。。ただこのおかげでレンズが外れない場合の対策もできたので瓢箪から駒ということで結果オーライ。(この辺は後述)
で、このシャッターが切れない、巻き上げられない状態を解消するには、分解して、どっかで引っ掛かって動きを規制しているレバーをちょいと開放してやるしか無いらしいのですね。
通常だと修理に出すんでしょうが、壊れてもともと、特に懐も傷まないので今後の勉強のため(もう二度とハッセルブラッドを手に入れることなんぞなかろうけど)、そしてシャッターが切れずに困ってる、ハッセルブラッドに手を出してしまったけど修理に出せない貧乏人の参考になればと分解を決行しました。
分解するに当たり、機種は違いますが(501cの情報が全くヒットしません)このカメラ屋さんのブログを参考にしました。明日は明日の風が吹く
まず、巻き上げクランクを外します。レバーを起こして。
ゴムの蓋を外します。何回やっても中に落ち込んじゃうのでノーズプライヤーでつまんで引っ張り出しました。
1番のプラスドライバーで
プラスビスを外すとクランクが取れます。
2本のピンがギアの穴にはまる仕組み。ここで見える範囲のレバーをドライバーでつついたら「ばちゃこん!」という音とともにシャッターが切れてしまい、巻き上げもできました。これで解決?
おおっ、ボディ側の突起が巻き上げ状態に。これでレンズがはまる!。
とここでレンズをはめてしまったのが運の尽き。通常「かちん」という音とともにロックが掛かるんですが同時にシャッターの切れる「ぱちゃん」という音が。もちろんシャッターは切ってません。というかこれでシャッターを切ることも巻き上げることもできなくなっちゃいました。うわあ、詰みじゃんか。だってレンズが外れないと分解できないのです。(なぜかは後で)。今度は穴から見える範囲をいじっても解除できません。そこで再びネットで検索、「ハッセルブラッド、レンズ外れない」。
ありましたー。
こういうときのためにフィルム側から例のジョイントを回せるそうです。まずこの上下観音開きの遮光幕を押し開くと
奥のレンズの真下に丸いマイナスネジがあります。これがそのまま表につながってるので、これを表と逆の反時計回りに3/4回転させると、前面側の溝がレンズをはずせる位置になります。ただし正規位置でカチンと止まるわけではなくバネの力で戻ろうとするので結構難しいです。
2枚上の写真は修理後巻き上げたあと、指でシャッターを切ったまま押さえてる状態なので遮光幕は開いてますが、通常は閉じているので上のように指で上下に押し開いて、そこのネジにドラーバーを突っ込むことになります。
ただ、回すと同時に向かって右下にあるレンズ脱着ボタンを押して、更にレンズを反時計回りに回さないといけません。手が3本必要ですが残念ながらうちには猫の手以外にはありません。
そこで木工用のスライドクランプでこのボタンを押した状態で固定し、後ろからドライバーでジョイントを反時計回りに3/4回転回しながら、レンズを足で挟んでボディを反時計回りにひねると、外れましたー。ばんざあい。これでやっと分解を続けられます。
カメラを裏返して三脚取付プレートを締め付けてるマイクロサイズのプラスビス6本を外します。全部同じネジです。
ここの2箇所も外します。このネジが裏蓋側の固定ネジです。
これも同サイズですので外すプラスネジは合計8本です。
最後にボディカバーのレンズマウント側と本体を固定している、2本のマイナスビスを抜けばカバーの固定は外れます。合計10本!え!これで分解できるの??と驚くほど合理的な固定方法でした。
これでレンズのマウント部分を指で押し込むと(レンズとボディでカバーを挟み込んでいる構造なので、レンズが付いてる=分解不可能なわけです。)
カバーと本体の分離成功。ただ、分離の際合計5個の部品がこぼれてくるのでなくさないように。
オレンジのレンズリリースボタン、黄色の穴からカラーが2個
シャッターレリーズボタン。
(左がシャッターレリーズ、右がレンズリリース)あと1個は?
実はレリーズボタンは2個の部品が合体してます。黄色い方はリモコンレリーズ用かな?
あと1個忘れてました。レンズリリースボタンのボディ側の受け。白い樹脂製でシャフト上をスライドします。(下すぼまりの状態でついています)カバー側のボタンがこの枠を押すと黄色のレバーが移動してレンズストッパーが外れるのです。
主な機能はすべて右側面に。オレンジはミラーアップレバー。どうもこれが悪さしてるようです。レバーを上げても何も起こりません。正常ならミラーをおろして固定する爪が外れてミラーが上がるはずなんですが。
右側にはあれだけ駆動部品が並ぶのに、反対面には軸受以外なにもないのよねえ。
正面。レンズマウントとシャッター、レンズリリースの仕組みだけ。
後ろは遮光幕。最初はこれがフォーカルプレーンシャッターの膜だと勘違いしていました。
ミラーが上がったあと、レンズシャッターが開く直前に真ん中から上下に観音開きに開き、シャッターボタンから指を離すと閉じます。レンズを外してもフィルムが感光しないためにあります。
右側面、右が前面。
黄色の矢印がシャッターボタンが直接押し込むレバー。なんですが、レンズシャッター機なのでレンズが外れた状態だとミラーが上がって遮光幕が開くだけです。というか現状ではロックしてるので押せません。
と、何度も写真を見ててはたと気づいたのですが、これってシャッターボタンだと思ってしまっていたけど、シャッターを押せないようにするブロック機構なのでは?
どうも本当のシャッターボタンはオレンジの矢印のピアノ線のようです。実際このピアノ線を押したらシャッターを押せないロック状態なのにも関わらず、ぱちゃこんという音とともにシャッターが切れましたから。同時に巻き上げも可能に。しかも頑として動かなかった黄色矢印のレバーもフリーになりました。
つまりこれで解決です。
赤がブロック機構(たぶん・・・)、青がシャッターレリーズ、オレンジは表に出てるボタンの位置決めガイドピン(コイツはボディ固定)。
シャッターレリーズボタンはこのようにつくので通常は赤青同時に押し込まれるのですが、ロックが効いてると赤に阻まれて青が押されない=ボタン自体を押せないという仕組みのようです。(推測)
なんにせよロックは解除できたので組み立てましょう。
あれ?、一方向にしか回せないはずの巻き上げレバーが手を離すと反対方向に戻ってしまいます。
このギアを回すとカチカチカチと矢印の爪がラチェットにかかって逆転しないはずですが、止まりません。
よく見ると蚊の足ぐらいの細いスプリングが外れてました。2枚上のように矢印部分に引っ掛けて解決。
本体側にオレンジ矢印のレンズリリースボタンの受けを取り付け(下すぼまり)
カバー前面の内側から、表に出るボタン2個を差し込み
2枚上の写真のシャッターボタンのオレンジの溝が、本体のここ(下の写真の黄色矢印)のシャフトにうまく引っかかるようにイメージしながら(このように載ってるだけのボタンが赤のシャッターレリーズの棒をうまく押せるような位置からずれないように)上部の切りかけのラインを水平に保って組み付けます。本来ならこのように本体側に位置を固定してからカバーを付けたいんですが、本体側にボタンを固定する方法がなぜかありません。
オレンジ矢印にレンズリリースボタンを、カバーのレンズマウント側の黄色矢印の2箇所の凹みに2個のカラーをセットします。
シャッターボタンとレンズリリースボタン、白い樹脂の受けが落ちないようにカバーに本体をゆっくり水平に押し込みます。特に最後は本体のガイドシャフトがシャッターボタンの溝にはまるように運を天に任せながら何度もやり直しましょう。うまく刺さるとシャッターボタンが回らなくなります。
その際、本体の黄色矢印のミラーアップレバーがカバーのミラーアップレバーと嵌合するように差し込むのですが、これがうまく引っかかりません。
組んで外部のレバーを上げると、樹脂レバーが金属アームを乗り越えてしまい、連動するはずなのに動きません。とりあえず今回はミラーアップは諦めました。というかこのレバーを引っ掛けると巻き上げができなくなるみたいですので、後で原因追求と治せるうまい方法を考えましょう。そもそもミラーアップレバーを触ってもミラーが上がらないのがすべての原因でしょうから。(多分グリスの硬化なんかでラチェットが外れないのかも)・・・シマノのSTIレバーの故障と同じ?
巻き上げレバーのピンをギアの2個の穴に合わせます。その際この矢印と本体の赤丸があってればすんなりつくはず。
あとは逆順でネジを締めて本体完成。ちゃんと巻き上げができるのとシャッターが切れるか確認しました。
巻き上げ前はミラーが上がってます。
ピント合わせ用のスクリーンを載せ
固定レバー2個を手動で引っ張り出し固定します。
後ろからファインダーフードを差し込みます。この時点では刺さってるだけで固定されてませんので落とさないように。フィルムパックをつけて初めて固定されます。
フィルムパックを準備。ブローニーフィルムのセット手順はググってくださいな。
フィルムパックはレバーを起こして回すと開きます。このフィルムは感光しちゃってるので撮影できませんが参考まで。
これがフィルム巻き上げ部。フィルムは下から上に巻き取られますが、35mmフィルムと違ってむき出しのフィルムを遮光用の紙と一緒に巻いてあるだけでケースはありません。紙がケースの代わりです。
しかも写し終わったフィルムのシャフト(スプールといいます)が次の撮影の時に次のフィルムの巻取り芯になるシステムなので捨てられません。
こちらが露光面。裏に白い遮光紙が一緒に巻かれてます。ただ途中まで撮影してフィルムパックを外す場合このままだと感光してしまうので(これは参考写真です。実際フィルムが入っていたら感光防止で下で紹介する遮光板が刺さったままのはずで、こういう状態はありえませんので誤解なきよう)
こんなの(遮光板)で
フィルムパックに蓋をします。(注:これはパックを外すため遮光板を刺している写真です。遮光板を刺していないとパックははまりません。)
こうなります。基本的にこの遮光板を入れないとフィルムパックは外れません。逆に遮光板が入ったままだと当然写らないので、シャッターが切れないようになっています。良く出来てるなあ。
あ、フィルムパック装着に関して注意を一つ忘れてた。
クランクを巻き上げると矢印の窓が白くなります。これが撮影可のマーク。フィルムパックをはめるとき、この状態じゃないとはまりません。
もしこのように赤い場合、このコマは撮影済みで巻き上がってないのでフィルムパックに付いてる方のクランクで白くなるまで巻き上げておきます。この絵の場合は6枚目は撮影済みで写せるのは7枚目ということですね。高級機では更に黄色い丸のところにも窓があります。取り付ける際には両方の丸が白色でないと今回のような悲劇が起きます。(ボディ側の窓の白は巻き上げた状態であることを示す。)
基本的にハッセルブラッドは巻き上げてシャッターチャージした状態がデフォルトだと覚えときましょう。巻き上げない状態ではバラさず、組まないこと。はい一緒に。「巻き上げてない状態ではバラすな!!組むな」
ただ、ジョイントをたった3/4回転ねじっただけでシャッターが切れるほどスプリングが強力なので、使わないときはシャッター切って置いといたほうが良さそうです。
ファインダーフードを開けて
撮影準備完了。
このカメラこのお値段(レンズとフィルムパック付きで25万円ぐらいだったらしい)なのに露出計のたぐいが一切ないフルマニュアル機ですので露出計も必要です。
*実は私はこのカメラ使ったことがありませんので、間違いだらけだと思いますが大目に見てやってください。
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素晴らしいです。
私もハッセル503CXでトラブっていますので、参考にさせて頂きます。
by Clunker Motors (2024-04-17 21:30)