4年越しのやるやる詐欺に終止符 ギアオイルを消費するKS2のエンジンオーバーホール17日め。エンジン完成。 [89’KAWASAKI KS-ⅡKMX80-A2]
長かった。6月から始めたKS2のエンジンオーバーホール。やっと完成しました。(自分の確認用ですので今までと同じ作業内容ばかりですが、ミスの確認のため時系列順に作業を記録しますので流し読みしてください)
それでは前回の全バラ状態からの続きから。
ミッションギアやシフトドラムをこれ用に新たに作った洗浄剤で洗い、オイルをまぶしておきます。
単体になったクランクケースを、これまた新品の洗浄剤(サンエスK1)につけて洗います。
今回は反省を込めて念入りに洗浄。
うげー、まだこんなに砂が・・・。結果として今回全バラしたのは正解でした。あのまま組んでたら・・・。
ベアリングの圧入穴を膨張させるため、カセットコンロとステンレスバットでお湯を沸かしてクランクケースを煮ます。前回はヒートガンを使いましたが、今回はクランクベアリングのオイルシールがすでに入ってるためあまり温度を上げるわけにいかなかったからです。お湯だと100度以上になりませんからねー。これでクランクベアリングを入れたら叩くまでもなく、すっと入ってしまいました。最初からこれでやればよかった。(チャラララーン、MHRはまた経験値を得た)
今回もまたベアリングがクランクに付いてきたので前回入れた新品ベアリングを抜き取ります。
ただここでもまた失敗。工具がピストンに食い込んでいるのに気づきませんでした。(左下の部分。)
新品ピストンのピンの下の部分を思い切りかじってしまいました。ただもうこれぐらいではくじけません。オイルストーンで削って修正。
ベアリングが外れたクランクを左ケースのベアリングに圧入します。
クランク端をクランクインストーラーで引っ張りますがストローク不足なので
前回同様、エンジンスタンドの足を使って嵩上げ。
クランクが底づきするまでグギグギと言わせながら引っ張り込みます。
今回品番を間違えてベアリングを発注してしまったため、スプロケットのつくアウトプットシャフトのベアリングだけが高級品になってしまいました。本来発注したのはクランクシャフトのベアリング、6304L1C3だったのですが、間違えて6203L1C3を頼んでしまったのです。(この写真の部分の本来のベアリングは6203C3)。”L1”がつくとベアリングのリテーナーがこのような真鍮製になります。ちなみに”C3”がつくベアリングはオイルに浸かって使うようにハウジングとボールの間のオイルが潜り込む分の隙間がゆるくできてますのでホイールなどに使うとガタが出ます。ホイールには無印(6203など)を使いましょう。
ちなみに無印ベアリングはこのような鉄のリテーナーでベアリングの位置決めをしてあります。
「Z」付きの片面シールドベアリング。このシールにはゴム製のもあります。もちろんグリスを封入した両面シールベアリングもあります。
シールを外せば無印に変身。中身はグリスが入ってないだけで同じものです。
さて、ここでこの「高級」ベアリングについて。4年前に買っておいた「高級」クランクベアリング。このように仰々しく包まれていて当時で2個3000円もしたのですが。
本体にレーザーで刻印されていた「6304L1C3」で検索したらモノタロウで普通に売ってました。しかもちゃんとNTN製で1個725円。半額です。1500円は包装代かい。
今回間違えて6203L1C3を発注してしまったため、クランクベアリングだけ再発注。と行くべきところをもう面倒になって以前買ってあった安い(1個350円)6304C3Eを使いました(4年前購入後にさっきの高級ベアリングを見つけたので封印したやつ)。本来のカワサキ純正品の番号は「R-6304C3」ですが、その番号の一般用ベアリングは市販はされておらず、純正品はむちゃくちゃ高いし(1個2000円)、何が違うかわからんのでとりあえずこれでいくことにしました。多分「R」や「L1」は1万回転以上の高回転用に精度が高いんだと思うけど、もし焼き付いたらまたばらせばいいや。今ならエンジンの分解、ベアリング交換、組み立てで6時間もあればできそうですから。
ちなみに前回クランクケースごと洗浄剤につけてしまったジャリジャリのべアリングたち、新品だったにも関わらず外してたった数時間で錆びて動かなくなったことをご報告いたします。つまり洗ったところで再使用は不可能でした。まあ、1個200円とか、300円ぐらいなのでケチってはいかんね。
すべてのべアリングを再々度交換したクランクケースに、ミッションを組み込みます。オイルをまぶしてシフトの動作確認。ただこの状態だとシャフトがグラグラなのでシフトがちゃんと入るかどうかまでわかりません。
ここの噛み合ってる2個が5速ギアなんですが、スライドする左のギア、表裏どっちにも入るので向きに注意します。多分最初シフトができなかった原因は、これを何も確かめずに適当に差し込んだためです。今回はちゃんとマニュアルで向きを確認して入れました。
ここを見ると5速がクラッチ側の回転と同速に近いギアだということがわかりますねー。
5速ギアの上に1速ギアを被せて完成。この状態が5速で、1速の大きなギアは左のシャフトとは切り離されて空回りしています。シフトペダルを1速へ踏み込むと、一つ上の写真の5速ギアが手前にスライドしてきて、大きな1速ギアの6個の穴に裏から5速ギアから生えている3本のピンが差し込まれてシャフトと一体化し、右の小さな1速ギアが大きなギアを経由して左のシャフトを回すことで1速での走行となるわけです。(左のシャフトの向こう側にスプロケットがついています。)
これでクランクケースを合わせる準備完了。
クランク室とギアボックスの合わせ面の液体パッキンはガソリン対応のものを使います。
これどっちも合わせ面用の液体パッキンですが、上のはガソリン非対応。これで同価格(1100円)です。耐ガソリンのやつ、たけー。4サイクルの場合、液体パッキンはクランクケースのオイルが外に溢れないようにシールするだけですが、2サイクルの場合はクランク室の合わせ面の液体パッキンは、ピストンの下側に吸入される混合ガソリンが隣のギアボックスにもれないようにしないといけないため、ガソリンと接触するのです。
右ケースのベアリングの収まり具合とシフトドラムベアリング抑えのネジ2本の締め付けと、ノックピンの有無を確認。
左ケースのノックピンの有無を確認し、合わせ面に耐ガソリンの液体パッキンを塗布します。ちなみにノックピンは圧入ではないはずですが、今回は左右それぞれのケースに1個ずつ食いついてしまいました。
右ケースのクランクベアリングは軽く叩くだけで左ケースにきつく圧入されたクランクシャフトにはまりました。左に比べるとかなりゆるいです。前にも書いたとおり、クランクインストーラーにはクランク右端のネジサイズ(M16)に対応するアダプターがないため助かりました。(左側はM10で、付属品はM10とM12とM14)
今回合わせ面の11本のプラスネジはすべて六角穴付きのボルトに交換し
プラスネジではできなかったトルク締めします。(6mmボルトの標準トルク8Nm)
忘れないうちにクラッチシャフトを引き上げながら根本をスナップリングで固定。ここを入れ忘れると、この壁の向こうのクラッチ側のミッションギアが左ケースの壁と接触してしまいます。
シフトドラムのカムを取り付けてピン抑えの皿をネジロックを塗ったボルトで12Nmで締め付け、ドラムの位置決めストッパーをボルトとプラスネジで固定します。こっちは指定がないけど2本ともネジロック塗ってます。ここも六角穴付きボルトにしようかと思ったのですが、クラッチハウジングの裏側に頭が接触しそうだったので元のボルトを使いました。
クランクシャフト右端にキー、プライマリーギア、スプリングワッシャー(お椀型に反ってるので凹面をエンジン側へ向ける)、オイルポンプ駆動ピンをセットしてナットを装着し
クラッチハウジングを仮つけし、バラしたキックギアを流用して廻り止めして、60Nmでナットを締めます。(チェンジシャフトなどを組み付けたあとでないとハウジングは固定できません)
いったんクラッチハウジングを外し、キックのアイドラーギアを組み付けてスナップリングで固定。ワッシャー2枚で廻り止めに使ったギアを挟んでキックギアを組み立ててケースに取り付け。シャフトの奥のワッシャーを入れ忘れないように。
リターンスプリングをケースのピンにかませ、先端の爪をシフトドラムに引っ掛けるようにシフトシャフトを押し込みます。
再度クラッチハウジングをインプットシャフトに差し込みます。が、ここでもポカミス。なぜかスナップリングがハウジングから5mmほど浮いてしまいました。あーっ、ハウジングの下とこっち側に2枚のワッシャーが入るんだった。
一度つけて開いてしまったスナップリングをプライヤーでもう一度締めて径を小さくして再装着。
クラッチ板ASSYを組み込んで軸用止め輪(正式名称、他に穴用止め輪がある)で固定します。クラッチセンターを押すプッシュロッドやボール、クラッチピストンなどの入れ忘れがないか確認し、ガスケットを挟んで右カバーを取り付け、これまたプラスネジのかわりに7本の六角穴付きボルトで8Nmで締め付け。オイルポンプは外さずに置いてたのでこれで腰下完成です。
チェンジペダルを取り付けて1速<>6速まで入ることを確認しました。ただ、前回の予想通り、途中2箇所ほどドグ同士が噛み合っていないと思われる位置で引っかかりますが、スプロケットシャフトを少し回すとカチャンという音とともにギアが切り替わり、全段入りました。多分これで正常なんだと思います(思いたい)
ここからは腰上なのでスタンドにセットします。エンジンが短すぎて前回同様このように金具で延長しましたがこれは間違いだったとあとで気づきました。(後述)
ピストンにオイルをまぶし、ガスケットを置き、ピストンリングの切り欠きの位置に注意して手で押し縮めながらシリンダーを落とし込みます。
ヘッドガスケットを載せてシリンダーヘッドも組み付け。
ジェネレーターを3本のプラスネジで固定します。ここでまたポカミス。前回同様シリンダー後方のブリーザーチューブを付け忘れてました。(写真は前回の)
錆びていたシリンダーヘッドの座付きナットは結局、ホームセンターやバイク用品店で買い揃えた市販品は使わず、カワサキ純正の座付きナットをモノタロウで購入しました。
ナットを22Nmで締め付けて腰上完成。プラグも新品に替えたかったけど、バイク用品店(日進市のしゃぼん玉)に同品番だけが設定すらないという・・・。ちなみに指定品番はBPR8ESです。7番と9番はあるのに8番だけ置き場所すらないの。AMAZONかモノタロウで買うか。
ニュートラルスイッチを組み付け、12Nmで締めます。
スイッチの配線を差し込みます。
あーっ、スプロケットのオイルシール頼んでない!。外したオイルシールを再使用します。ベアリングを抜くときに一緒に叩き出したため外周に傷が入ってたので液体パッキンを塗って叩き込みました。(一応新品未使用だし、漏れてもここの交換は簡単なので)
カラーにOリングを組み込み押し込んで、スプロケット装着。軸用止め輪で固定します。新品のOリングの反発で手こずりましたが、リング溝に無事止め輪が入りました。
クランクシャフトにキーを入れフライホイールを組み付けて、43Nmでナットを締め付けます。
カバーを組み付けます。チェンジペダルとスプロケットカバーは仮づけ。
右側にキックレバーを取り付け、オイルポンプカバーも仮づけ。リードバルブASSYを組み込み(ここもプラスネジから六角穴付きボルトへ)。
あとフィンの共振防止のゴムを付けなくては。
草刈り機用に買った固い燃料ホースでオイルラインをつなぎます。(クランプは後で)
これで腰上仮完成です。自信喪失と戦った長い長い3ヶ月でした。
さてエンジンスタンドですが、基本的に組み方を間違ってました。荷重方向から察して受けを真上に向けてたのですが
こういうふうに受け金具を横にすれば小さいエンジンでも届くのです。ストレートの広告の写真を見るまで全然気づかなかった。(重いエンジンでは無理がかかるけど)
ということでエンジンが完成したのでフレームのサビ落としにかかりました。がんばろー、おーっ。
おまけ
この世で自分ほど信用できないやつはいないので、もう一度クラッチカバーを開けて再確認しました。
まずこのプッシュロッド。間違いなく入ってます。
プッシュロッドを抜いて、クラッチASSYを留めている止め輪を確認。うん、大丈夫。
ボールベアリングはちゃんと入ってるよね。OK。
プッシュロッドのシャフトとボールにモリブデングリスを塗って戻します。
カバーの方のレリーズピストンが入ってるか確認。OK。
ノックピン2個も入ってる。OK。
ガスケットのオイルを拭き取りカバーを戻します。杞憂でしたけど。この安心感には替えられん。
ビフォアー
アフター。
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寝る間際にサイトを見たら、更新有った!
いつもながら、エンジンミッション整備、素晴らしいです。
当方、バイクのミッション一体エンジンの分組したことが無く、いつも手順、K/H、感心しています。
来月、定年退職ですので、真似事にしかなりませんが、当方もこれから頑張ってみます。
by かつデルT (2023-09-12 01:09)
祝!エンジン完成。
お疲れ様でした。
こっちのVTも公道復帰できましたので、気候が良くなったらそちらへ行きます♪
by ぱりだか (2023-09-12 10:58)
かつデルTさんご訪問ありがとうございます。
痴呆が始まってるみたいなので急がないといけませんが、なかなか先に進めません。65すぎると一気にだめになってくるので、定年されたらすぐに手を付けてくださいね。原付きはいじって良し、乗ってよしで楽しいですよー。軽トラもおすすめです。
by MHR (2023-09-13 23:18)
ぱりだかさんご訪問ありがとうございます。
私がギア1個をやっと組んでいる間に、あのVTが、あの状態から復活したことに驚きを禁じえません。すごいの一言です。
by MHR (2023-09-13 23:21)