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鈑金でここまでできます。 絞り加工。 [職業訓練校とか資格とか]

職業訓練校の金属加工科。

といっても流行のNC制御の機械加工は一切なし。

ほとんど手加工の世界です。

その中でも感動したのがこれ。

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加工前の材料。厚さ1㎜のアルミ。直径140㎜にはさみで切り、コンパスで同心円を描きます。

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使うのは大型万力にはさんだ「ぼうずならし」というらしい工具。これと

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芋ハンマーと呼ばれる鈑金ハンマー。

まずは中心から40㎜の円周の外を、ハンマーで外周に向かって渦巻き状にたたいていきます。

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一周回るとこんな感じ。たたき出しといいますが、正確に言うと、つぶすのではなく、同心円上をたたいて下に向かって曲げていくのです。

CA3C0020.jpg

二周目はこんな感じ。丸くなってきました。

CA3C0021.jpg

真ん中40㎜の円内はたたきません。周りに引っ張られて自然に球面になります。

CA3C0022.jpg

三周目でこんな状態に。意識して丸くしているわけではなく自然にこうなります。

CA3C0023.jpg

裏にもきれいに槌目がつきます。雪平なべってこうして作るんですね。

ある程度たたくと、へろへろだったアルミ板がカチカチになって曲がらなくなるので(加工硬化と言います)、マジックで表面に渦巻きを書いてからバーナーであぶります。マジックが蒸発して消えたら火から離し、自然冷却すると元の硬さに戻ります。これを焼きなましと言います。なましたものをハンマーでたたくと元のように簡単に曲がるようになります。

どうしてマジックで渦巻きを書くのかと言うと、アルミが600度で溶けるのに対し、アルミの表面にできている酸化皮膜(アルミが白っぽいのはこれのせい)が1500度まで溶けないから。

結果として、アルミは鉄と違い熱しても赤くならないことも手伝って、表面が溶けていないのに中身が突然溶け落ちてしまうのです。

マジックはその防止策。およそ300度で溶けて消えるので、温度管理の目安となるわけです。

CA3C0024.jpg

最後はおたふくハンマーという、よく見かける鈑金ハンマーに持ち替えて、坊主ならしの上で、でこぼこをつぶしながら表面を叩いていきます。この時、坊主ならしとハンマーはぴかぴかに磨いておかないと傷だらけになりますので注意。叩くことでかなり深い槌あともきれいに消えて、このようにぴかぴかになります。(ひとつ上の写真と比べてください。)

CA3C0025.jpg

直径140㎜の板から直径100㎜の半球が出来上がりました。別に磨いたわけではありません。たたくだけでこうなります。もちろんコンパウンドなどで鏡面仕上げにすることもできます。

これを応用すればアルミタンクもたたき出しで作れますねー。(時間はかかりますが)

正直一周目あたりでは平面がここまで曲がるとは思いませんでした。

いいこと覚えちゃった。ヘッドライトのハウジング作っちゃおう。

再度言いますが、必要な道具は坊主ならしに万力、ハンマー2本のみ。勇者の剣など要りません。

ちゃららーん。MHRはレベルが上がった。絞りを覚えた。


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hana

一つの工程に
多くの知恵と科学と技術がつまっている!!

ここから匠の世界へとつながるわけですね。
by hana (2009-09-15 07:02) 

ぱりだか

すご〜い!
このブログをみていると、自分も通いたくなってきます。
技術を身につけると、趣味の範囲も広がりますねー。
by ぱりだか (2009-09-15 19:58) 

二兎を追う男

すばらし~い。

ヘッドライトバケット、カスタムフェンダー、カフェレーサー用のシートカウル、究極はアルミタンクですよねえ・・

私もどこか学校探して通いたくなってきました。


by 二兎を追う男 (2009-09-15 23:44) 

MHR

hanaさまありがとうございます。
失業して初めてわかる「手に職」の意味。
もっと早くこの世界を知りたかったです。

ぱりだかさまありがとうございます。
難しいと思っていたことの間口が意外と広いのに驚いています。なんにでもチャレンジしてみるものですねー。

二兎を追う男さまありがとうございます。
学校でなくても達人の弟子入りができればいいのですが。ブログが意外と技術伝承に役立つかもしれません。すごい人が一杯いますから。
by MHR (2009-09-16 20:13) 

nobuki

 楽しい事してますね!
 やりた~い!
by nobuki (2009-09-17 23:48) 

kanchi

こんにちは!

以前、BS-i で人間国宝を紹介している番組があり、その中で銅を加工する職人さんの回を見たことあります。 単なる銅板から叩いて、叩いて色々なカタチの物が出来上がっていくのには驚きました。

底に相当する箇所が平らならば、取っ手を付ければ雪平なべなのでしょうが、アルミでは溶融した成分が「ボケ加速剤」となってしまいますねぇ。

それにしても楽しんで勉強していますね!
by kanchi (2009-09-22 10:54) 

MHR

nobukiさまありがとうございます。
人間なんでもやってみるものですね。今つくづく感じております。

kanchiさまありがとうございます。
あの回見ました。
あの時はまさか自分でやれるなんて思いもしてなかったです。
愚直に同じことを繰り返していく。それが職人なんですねー。
by MHR (2009-09-22 21:21) 

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