BMWR100RS ヘッド増し締めとタペット調整。 [88'BMW R100RS]
47500㎞で手に入れたきれいなBMWR100RS。
ところが初めてオイル交換した時点からいろんなぼろが出てきました。
エンジンオイルはどろどろ、ギアオイルも真っ黒け。シャフトオイルに至っては水が混じって真っ白。
まあ、4年ぐらいエンジンをかけるだけだったらしく、外観だけはきれいなままだったので、それはそれで助かりましたが。
タイヤ交換に始まり、フォークオイルシールの交換(オイルがどろどろでした)、オイルフィルター交換(こっちも真っ黒)、ブレーキキャリパーオーバーホール、セルモーターの交換、キャブの同調なんかを順番にやってきましたが、今回いままで面倒くさそうで避けていたタペット調整に挑戦しました。
OHC(DOHC含む)エンジンではバルブ駆動はほとんどチェーンやベルトですので、ヘッドの締め付けトルクはバルブクリアランスには影響しません。
しかしOHVエンジンはクランク側にカムがあり、長いプッシュロッドでロッカーアームを押し上げ、支点の反対側にあるバルブを突き上げます。つまりカムがプッシュロッドを通してシリンダーとヘッドを押し上げるのです。これではヘッドの締め付けトルクによってバルブクリアランスが変動します。
しかもこのエンジン、クランクケースから伸びた4本のスタッドボルトだけで、シリンダーとシリンダーヘッド、あろうことかロッカーアームのホルダーまでを締め付ける構造。(わかる人はモンキーと同じだと思ってください。)
この構造だと、シリンダーを固定するスタッドボルトが伸びてくると、シリンダーヘッドの締め付けトルクが不足して、プッシュロッドがロッカーアームホルダーを押し上げてしまい、バルブクリアランスがますます狂ってしまうのです。
そこでまずスタッドボルトへの締め付けトルクを確認します。(ほとんど増し締めが必要)
おっとその前に、5速に入れて後輪をエンジンに直結してフライホイールをまわし、上死点をださなくてはいけんません。(バルブが完全に閉じた状態)
クランクをまわす抵抗になりますので、まずはプラグをはずします。
左のプラグ。ちょっとすすけてます。
こっちは右側。きれいに焼けてました。
次にロッカーカバーをはずします。ここは13㎜のボックスが必要です。ただしここだけはずしてもカバーは取れません。
シリンダー側のこの部分に10㎜のナットが対角に2個あります。これをはずすとカバーが外れますが、カバー内に溜まっているオイルがたれますので、オイル受けを下に置いておきます。
ここで見てはいけないものを発見。左のカバー下側からオイル漏れが。どうやらパッキンが変形している模様。こういうことを発見できるので整備は面白いです。(って、もっと早く気づけよな)
ここら辺のパッキンが浮いてます。
OHCと比べると何もないシリンダーヘッド。バルブタイミングを見る必要がないので、シリンダーをはずしても、ただ組み付けるだけで元のようにエンジンがかかります。
まず四隅にあるナットを規定トルクで締め付けます。指定トルクは35NM(ニュートンメーター)から39NMとなってますが、4本共25NMぐらいで簡単に回ってしまいましたので、3回に分けてトルクを増しながら35NMになるまで締め付けました。
このナットは15㎜というドイツ車特有のサイズです。通常のソケットセットには入っていないサイズですので別に購入する必要があります。これはドイツ製の特売ソケットセットに入っていたもの。(ドイツ車は11㎜とか13㎜、15㎜を多用しますねー。)
次にミッションを5速に入れて後輪をエンジンに直結してフライホイールをまわし、上死点を出します。
エンジンのオイルレベルゲージの上にあるゴムキャップをはずすと、中にリングギアが見えます。後輪を回していくと、2個あるバルブがエンジン側に入り、また戻ってきます。どちらも戻りきったところで窓をのぞくと近くに「OT]というマークがありますのでそこを窓の真ん中に持ってきます。ここがそちらのシリンダーの上死点です(バルブが完全に閉じた状態) 。ここでIN,EXともロッカーアームを手でゆすると少し隙間があってカタカタ動くはずです。反対側を見るときはクランクを180度回します。
まずIN側バルブとロッカーアームの間にシックネスゲージを突っ込みます。こっちは正規0.10㎜ですが0.08㎜ぐらいしかありませんでした。音が気になるとついついクリアランスを詰めがちですが、このエンジンはカチャカチャいうぐらいで正常です。調整はまずスパナでこのようにプッシュロッド側の12㎜の六角を固定して、その手前側に写っているナットを12㎜ボックスで緩めます。
このようにプッシュロッドをカム側に押し付けながら、0.10㎜のシックネスゲージを突っ込みます。
0.1㎜がぐぎぐぎいいながら入るぐらいがベスト。プッシュロッド側の6角を向かって右回しすると隙間が小さくなり、左回しで隙間が大きくなります。このあと12mmナットを締めると隙間が大きくなりますので少しきつめで。決まったらプッシュロッド側の六角をスパナで固定して、ナットをトルクレンチを使い18NMで締め付けます。ゆるかったり締めすぎていたらもう一回やり直します。今回は都合4回ほどやり直しました。
今度はEX(エキゾースト側)を0.2㎜に調整します。ここは0.1㎜しかありませんでした。これではエンジンが高温になるとあちこち膨張して排気バルブを突き上げてしまいます(つまり圧縮漏れ)。この辺が低速でのしゃくりの原因かも。
ここのナットは18NMで締め付けますが、最近買ったプリセット型トルクレンチは28NMからしか目盛りがなかったので、引退したプレート式を引っ張り出して、180kgf・cmで締め付けました(正確には183.5kgf・cm。およそ1NM=10kgfcm)。ガキのころから体でトルクを覚えた身にとって、こっちのほうが手に伝わる感触がわかりやすく、安心して締め付けることができますねー。カチンというプリセット型はボルトをなめそうで怖いです。
調整が終わったらカバーを取り付けます。3箇所ともワッシャーが入ってますが、真ん中のは、はずすときにカバー側に残るので注意。
今度は右側のエキゾーストですが、こっちも0.10㎜しかはいりません。当然0.20㎜に調整します。
こっちのヘッドナットは2本が28NMで回ってしまいました。締め付けにばらつきがあったわけです。こっちも35NMで締め付け。
IN側も左と同じく0.1㎜が入りません。こちらも0.1㎜に調整し、カバーをつけて終了です。
クランクケースの窓にゴムキャップを忘れないように。
プラグを20NMで締め付け、プラグキャップをつけて、すべて完了。
エンジンをかけてみたら調整前よりエンジンがにぎやかになりました。隙間を増やしたので当然ですが、カチャカチャいいながらも、アイドリングが800回転で安定しています。
そこからアクセルを開けてもまったくもたつかず、回転がスムーズにあがるし。今回も勝ったようですね。
このバイク、やったらやっただけよくなっていくのでとっても楽しい!
今度は、今まで大丈夫と言い聞かせてサボってきた、キャブのオーバーホールしましょうかねえ。
*右側のカバーガスケットの穴がスタッドボルトに引っ張られて長穴になっていました。取り付けが悪かったようです。ちなみにシリンダーヘッドのガスケットは見た目対称に見えますが、ほんのちょっとですが左右対称ではありません。ここにはプッシュロッドの通る穴がありますが、ガスケットの左右を間違えるとガスケットの穴のふちがアルミ製のプッシュロッドと干渉しロッドを削ってしまうそうです。
オイル漏れしそうなので、さっそくイギリスの通販会社「MOTO-BINS」にガスケットやらオイルフィルターやら注文してしまいました。
にほんブログ村
にほんブログ村
にほんブログ村
こんばんは、
いつかはOHVと今乗っているR1200Rの2台体制にしたいのですが、メンテナンスはやはり大変なんですね。
by たくや (2009-11-23 20:23)
ヘッドからのカチャカチャ音は、タペット以外にロッカアームが、スラスト方向に動くときに出ます。
ロッカアームのサイドクリアランスが0.10mmになっている確認してみてください。
ここが広がっていると、いくらタペットを調整しても音が出ます。
今度ヘッドカバーを開ける機会があったら、ご確認下さい。
by ぱりだか (2009-11-23 21:27)
たくやさまありがとうございます。
大変=楽しいに変わってきますよ。
もちろんこれが北海道ツーリングの途中だったらオートバイを蹴っ飛ばすところですが。モンキーを分解できる人だったら間違いなく楽しめます。
by MHR (2009-11-23 21:58)
ぱりだか様いつもありがとうございます。
ガスケットが心配なので(今回再使用)近いうちにもう一度あけますのでそのときに確認してみます。
こういうことをR80G/Sパリダカのときに知っていたら絶対手放さなかったと思うと悔しいです。かなりい大きな音がしていたので、ベアリングが逝っていた可能性もありますが、今なら直しちゃいますから。
ところでガスケットって向きがあるんですよね。
右のカバーガスケットが左によっていて、穴がずれて長穴になっていました。
by MHR (2009-11-23 22:03)
ボクサーエンジンの利点ですね~
ヘッドのアクセスが凄く簡単。
これならオイル交換くらいの気安さでタペット調整できますね。
ボアアップでもエンジン下ろさなくていいし。
キャブの脱着も楽そうですね。
BSAだと、タンク外して、ヘッドカバーをフレームに固定しているステー外して、ヘッドカバー外して、となります。
OHVはヘッド増し締めしたら、タペットもですか。
確かにそうですね。
by 二兎を追う男 (2009-11-24 00:11)
確かにドイツ車は11㎜とか13㎜、15㎜を多用しますね。
プリセット型のトルクレンチは、ボルト、ナットの材質によっては私も使わずに、体感で締めることありますね~。
by kanchi (2009-11-24 07:37)
ヘッドの中、綺麗ですね!
わたしのは、カーボンで真っ黒ですよ!
by nobuki (2009-11-24 09:51)
初めまして、イナイチと申します。
8年ぶりにR100RSを復活させました。
復活の際、ブログの記事を参考にさせていただき、
作業をする上で、非常に助かりました。
御礼申し上げます。
今後ものぞきに来させていただきますので、よろしくお願いいたします。
by イナイチ (2009-11-24 20:38)
ところで、良かったらサービスマニュアルをお貸ししましょうか?
GS用ですけど、エンジンとかは参考になると思いますよ。
by ぱりだか (2009-11-24 21:12)
二兎を追う男さまありがとうございます。そういえばBSAもOHVでしたね。整備性はBMWの勝ち?このバイクは整備の基本を教えてくれるので飽きません。
by MHR (2009-11-24 22:55)
kanchiさまありがとうございます。プリセット型にトルクメーターがついてればいいのにと思いますねえ。右手の感覚って下手するとトルクレンチより正確だったりします。なめそうな瞬間のあのいやな感覚。今まで何度味わってきたことか。学生時代、スズキのTS400のシリンダースタッドを引きちぎったときは涙が出ました。
by MHR (2009-11-24 23:00)
nobukiさまありがとうございます。
私もあけてびっくりです。5万㎞を走ったエンジンとは思えないクリーンさです。それなのにどうしてオイルがあんなに汚れてたんでしょうねー。
by MHR (2009-11-24 23:02)
イナイチさまありがとうございます。
私もインターネットの恩恵をたっぷり受けてますので「役に立つ」をポリシーにしてブログやサイトを作るように心がけています。写真の量もその証。おかげで、カメラ代わりの携帯はオイルまみれです。お役に立てて幸いです。
by MHR (2009-11-24 23:05)
ぱりだかさまありがとうございます。
今のところいい加減な内容ではありますが、クライマーとヘインズのデータで何とかなってます。もし手に負えなくなったらマニュアルと言わずお体を借りに行きますのでお願いいたします。
by MHR (2009-11-24 23:07)
都合が合えばいつでもOKですよ!
by ぱりだか (2009-11-25 22:23)