マセラティ ビトゥルボのセルモーター修理。 [車、バイク]
オークションに出品していた「R100のVALEOセルモーターの修理をします」を見つけた人から、車のセルモーター修理の依頼をいただきました。
「同じバレオのD6RA23というセルモーターなんですが、写真を見る限り同じ部品を使っているようなのでみてくれませんか?車種はビトゥルボ系マゼラッティなんですが」
マセラッティビチューボ(人によって読み方が違いますが、私はGTロマン風にこうよびます)というとツインターボ?スーパーカーじゃん。
で、届いたセルモーターがこれ。
へ?1000ccのオートバイ用と同じではないですか。確かビチューボは3ナンバーでしたよね???
早速分解。
構造はR100用と全く一緒なので分解工程は省略。
違いを見るため並べてみます。
ベースの形は一緒。(左がD6RA15用新品。)
マグネットの形も一緒。
ギアの歯数も一緒。
ブラシ部分も一緒。
というわけで、D6RA23はD6RA15とブラケットの形が違うだけじゃん。これならオーバーホールでD6RA15の部品が全部使える!!
と喜んだのもつかの間。
遊星ギアユニットのメインシャフトの長さが違ってました。
D6RA23は基部にあるサークリップの溝から先端まで84mm。
D6RA15は91mmと、約7mmD6RA15が長い!
試しに先端からストッパーまでの距離を測ると。D6RA15は。
ちょうど20mm。
D6RA23は
やっぱり20mm。
つまりシャフトの首下だけが7mm短いのです。これではシャフトと一体になったD6RA15の遊星ギアユニットが使えません。
また首下が短いので当然ですが
ピニオンが短い!=ピニオンも使えない。(右がD6RA15用新品)
まあ、この2個の部品はよほどひどい状態じゃなかったら使えるので、修理を強行しました。
まずは動かない原因を追及。
見事に割れたブラシホルダー。当然交換。完全にバイク用と同じ部品でした。
もうひとつの不動要因。遊星ギアを受ける樹脂製の外周のギアが見事に削れてます。これではモーターが回っても空転してしまいます。原因は3個ある遊星ギアが、剥離して砕けたマグネットの破片をかみこんで回ったためだと思われます。
約1時間で全バラ。何回もやっていると作業が早くなりますねー。実はこの作業の前に1個、D6RA7(R100RS用)のオーバーホールを済ましてます。
今回再使用したオリジナルパーツ。
で、これが新品の交換部品。左上から左回りにブラシホルダー、グロメット、ベアリング(ブッシュ)4個、ギアトラック(サンギア)、ブラシ2個、ブラシスプリング、そしてマグネットハウジング(右回転用)。これはすべてD6RA15用ですが問題なく使えました。
再使用する部品を洗浄し、組み付けに入ります。
先端のブッシュ圧入。
遊星ギアユニットのシャフト後端にアーマチュアの先端支持ブッシュを圧入。
ここまで入れます。
樹脂ギアに遊星ギアユニットの後端支持ブッシュを圧入。グリスを詰めます。
遊星ギアにもグリスをつめ込み。
ギアトラックハウジングに突っ込みます。
スペーサーを入れサークリップで固定。
でここで問題発生。シャフトが何かに引っかかって回りません。再度ばらすと、遊星ギアに砕けたマグネットの破片が数個噛んでました。磁力があるため、鉄製ギアにくっついたやつはパーツクリーナーでは落ちなかったようです。先の細いドライバーで破片を取り除き、やっと手でスムーズに廻るように。
減速部完成。
新品のD6RA15用マグネットハウジングは定番のマグネット剥がれ対策済み。
アーマチュアをサークリップでマグネットハウジングへ固定します。
中間作業は前回の作業参照。
グロメット、ブラシホルダー、スプリングを新品交換。絶縁カバーを被せて。
ブラシカバーをつけて駆動部分完成。
駆動部と減速部を合体。
ブラケットをつけて完成です。
バッテリーを接続しトリガーに12Vをかけると。
ヒュイーンという気持いい音で回りました。
作業完了です。
FIAT用などのD6RAのセルモーターの修理依頼はyahooオークションで「D6RA」で検索してください。
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お見事です。小気味良い手順で気持ちがいいですね。
マセラッティのセルとバイクのセルがほぼ一緒とは驚きです。
余程トルクのあるセルなのですね。
by さる1号 (2010-12-23 22:28)
素晴らしいお手際ですね。
自分もOHVマシンに乗っていますので
この先お世話になるかもしれません。
過去記事も含めて勉強させていただきます。
by harry (2010-12-23 22:44)
こんにちは。
R100と、ビトゥルボのセルが同じとは(凄)
いつもお世話になっているお店の社長が、以前ビトゥルボを持ってましたが、買い替えで手放したみたいで(哀)
by HIRO (2010-12-23 23:42)
さる1号さま ありがとうございます。
リダクションタイプですのでトルクはあります。(4WDの寒冷地仕様に積んでいるやつです)
by MHR (2010-12-24 18:49)
Harryさまありがとうございます。
OHVの究極マニュアルを作成するつもりでブログを書いていきますのでよろしくおねがいいたします。
by MHR (2010-12-24 18:53)
HIROさまありがとうございます。私も驚きました。この手でマセラッティのセルを直すことになるとはねー。いずれカウンタックのセルも直せたらいいなあ。
by MHR (2010-12-24 18:57)
お久しぶりです。
ビトルボのセルを修理する事になるとは♪
また、一つ壁を突き抜けた感じですね。
その内、昔描いてたストラトスの修理を依頼されたりして♪
by 愛知のイナ (2010-12-25 00:26)
愛知のイナさまありがとうございます。
出来れば「自分の」ストラトスを修理したいですねー。
by MHR (2010-12-25 21:39)
GTロマンのビトルボの回憶えています。
V6のビトルボとフラットツインのバイクで同じスターターを使っているなんてビックリギョウテンです。
遊星歯車ってどうしても仕組みが理解できません・・・。
by ももんが (2010-12-25 22:45)
ももんがさまありがとうございます。
遊星歯車のギア比は私も理解できません。
ゼロ戦なんかの星型エンジンのプロペラはエンジン直結ではなく減速機構として遊星歯車が当たり前に使われていたようですね。
by MHR (2010-12-26 19:11)
超お久しぶりです。
バイクとクルマのセルの仕が同じって凄いですね。
しかも、さらっと直してしまうところも、プロです。 素晴らしい!
大昔、零戦の栄21型の模型エンジンを作ろうとして、
図面を書いたことがありますが、確かに、遊星歯車で
減速していました。 大径のペラをゆっくり回す方が
効率がよろしいようです。
遊星歯車の減速比ですが、今回のセルモーターに例えれば、
アマチュアの歯数÷(アマチュアの歯数+外周の歯数)
です。 出力軸の歯数は関係ありません。 不思議ですね。
(間違っているかもわかりません。 調べて下さいね)
なんか、話が脱線しましたが、実は、セルモーターの修理を
依頼した方を、良く知っていたりします。
なので、久々の投稿をさせていただきました
世の中狭いですね。
by 紫電改のタカ (2010-12-28 14:47)
紫電改のタカさまありがとうございます。「零戦秘録」という整備、操縦マニュアルを手にいれたので夢中で読んでいます。星型エンジンっていいですねー。
修理の依頼人の名前も書いていないのに分かるのは???
うーん、謎です。
by MHR (2010-12-28 22:11)
多分私も、その本持っています。
あの断面図から、寸法を拾ってデータを作りました。
結局、資金不足でいまだ、データのままです。
前置きはこのあたりにして、
セルモータの謎をときあかしましょう。
実は、2001から2004までマセラティに乗っていまして、
そのMLに参加していました。
今は、幽霊会員でROMってばかりなのですが、
たまたま見た、依頼主の投稿の中にURLが
貼り付けてあったので、開いてみたら、
なんと、MHRさんのHPだった、というわけです。
あっとおどろく、ため五郎(古!)
って感じでした。
なので、投稿しない訳にはいきませんよね。
世の中狭いというか、繋がっていますね。
良いことしかできません。
残すところ、あと3日、
来年もよろしくお願いします。
良いお年を!
by 紫電改のタカ (2010-12-29 18:25)
紫電改のタカさまありがとうございます。
依頼主のkiriさんからセルモーターが快調である旨連絡をいただき、そのときに初めてタカさまのお名前を伺いました。ほんとに世の中狭いです。
by MHR (2011-01-01 16:39)